協会について | 一般財団法人 建築研究協会

協会について

ご挨拶

文化財保存のこれから

理事長 鉾井 修一

鉾井理事長

当財団の定款には、「建築技術に関する調査研究を行い、あわせて建築技術の研究を助成し、その発展を図り、もって建築文化の向上発展に寄与することを目的とする。」と規定されており、目的に向けて、文化財・文化遺産の調査研究と助成、文化財建造物・社寺建築などの保存・修理・復元・活用・耐震・防災事業の設計監理、公共施設・文教施設の設計監理などを行ってきました。実績については、本ホームページを参照下さい。

改訂前のホームページでは、そのような活動を前提に、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)へ向け、長寿命化・省資源・省エネルギーの更なる展開をと書きましたが、近年、国際紛争、政治・経済の急激な変化、感染症蔓延などの政治・経済・社会問題をはじめ、将来予測の困難な課題が多くなりました。当協会に密接に関係することがらとして、地震や風水害など自然災害、ヒートアイランドや地球温暖化など都市~地球レベルの環境変化を顕著に感じるようになってきました。阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)などとともに本年正月早々には能登半島地震(2024年)があり、現在は南海トラフ地震の発生が云々されています。いつ自分の周りで地震が起きても不思議ではありません。河川の氾濫(2018年西日本豪雨)、土砂災害(2021年熱海市土石流)、都市水害なども数多く発生しており、以前とは異なる進路をとる台風や線状降水帯の経験など、何かが変わってきていると感じられます。

これらの災害や環境変化から文化財をいかに守るかは、大変重要で難しい課題です。当協会としては、災害や環境変化に強く長期に亙って健全な建物を設計し管理する必要がありますが、例えば地震に対しては、文化財建築にどの程度の耐震性能を持たせるか?想定すべき地震動入力は?補修・改修において文化財としてのauthenticity(真正性)を維持しつつ十分な耐震性能を持たせる設計とは?などは必ずしも自明とは言えません。また、我々は種々の外乱を敏感に感じ反応できますが、文化財は温湿度や日射などの外部からの刺激に対して緩慢に変化することが多く、劣化は見えない形で徐々に蓄積します。それを検知し好ましくない影響を除いてやる必要があります。その場合、過剰な安全設計、過大な設備設計、エネルギー・資源多消費型の対策が取られがちで、SDGに反することになります。機械設備を導入すると火災の危険性も増します。文化財の何を、どの程度まで、どのように守るのかは、これからの10年~数10年先の急速な変化を想定すると、待ったなしの喫緊の課題と言えます。

それではどのように対応するのか?将来の変化に対する予測が決定的と考えられますが、変化の激しい不確定な状況下での将来予測は難しく、更に環境変動による劣化のみならず社会的(人由来の)劣化も合わせて考慮する必要があります。国や自治体、関係諸機関による規準などをベースとし、それらに当協会のこれまでの蓄積を加味し総合的な判断の下に設計管理を進めること、そのための協会規定のようなものを準備することが必要と考えます。

それを推進する最善の方策は人材育成、優秀なスタッフの充実だと思います。日本は世界と比較すると「大人が学ばない国」1)で、会社は従業員の学びに投資をせず、個人でもあえて学ぼうとする人は少数とのことです。当協会では、これまで大学や同業種、自治体など外の機関との交流・情報交換、技能資格取得のための研修会への参加などを推進してきました。今後は更に、若手職員には技能資格取得に加え学位取得へ向けた学習を奨励し、経験豊富なスタッフには外の研究会・講演会の委員や講師としての教育への関与、インターンの訓練教育を通じた知識・技能の対外展開をしていただく。協会自身としては、定款にある伝統建造物診断評価にかかる委員会の開催や、継続的な研究会の場の提供が考えられます。スタッフの一層の技能向上は、国・自治体、関連業界、クライアントからの信頼の獲得、高い技術力を必要とする仕事の依頼にも繋がることが期待されます。

当協会は、令和7年(2025)1月に創立70年の節目を迎えますが、これからも時代の趨勢に適切に対応しつつ、広い意味の建築技術や建築文化の向上と発展に寄与すること、全地球的な視点を持って地域の文化遺産の保存と活用、歴史的環境の持続と創造に貢献することを目標として、堅実に歩んでまいります。

協会の概要

一般財団法人 建築研究協会について

 昭和30年1月8日、民法第34条の規程による公益法人として文部省(当時) の許可を受け、京都大学建築学教室の教官(当時)が設立した財団で、新しい公益法人制度が平成20年12月1日に施行され、内閣府の移行認可を受け平成24年4月1日に一般財団法人へ移行しました。
本法人は、建築技術に関する調査研究を行い、あわせて建築技術の研究を助成し、その発展を図り、もって建築文化の向上発展に寄与することを目的としています。

沿革

昭和30年(1955)1月8日 財団法人建築研究協会設立(京都大学工学部建築学科内に設置)
昭和44年(1969) 財団法人近畿地区発明センター内に移転
昭和47年(1972)12月 京都市左京区田中関田町43に移転
昭和56年(1981)12月 事務所増築
平成12年(2000)3月 鳥取事務所閉所
平成13年(2001)6月 建築研究協会誌 刊行
平成15年(2003)10月 東京事務所閉所
平成24年(2012)4月1日 一般財団法人建築研究協会へ移行

歴代理事長

氏名 就任年月 退任年月
岡田 辰三 昭和30年(1955)1月 昭和30年(1955)6月
児玉 信次郎 昭和30年(1955)6月 昭和30年(1957)5月
堀尾 正雄 昭和32年(1957)5月 昭和34年(1959)5月
村田 治郎 昭和34年(1959)5月 昭和60年(1985)5月
前田 敏男 昭和60年(1985)10月 平成3年(1991)7月
堀内 三郎 平成3年(1991)7月 平成10年(1998)10月
川上 貢 平成10年(1998)10月 平成18年(2006)3月
松浦 邦男 平成18年(2006)4月 平成22年(2010)3月
加藤 邦男 平成22年(2010)4月 平成29年(2017)6月
髙橋 康夫 平成29年(2017)6月 令和5年(2023)4月
鉾井 修一 令和5年(2023)4月

組織図

組織図

役員名簿

理事 鉾井 修一(代表理事 理事長 京都大学名誉教授)
今村 祐嗣(代表理事 常務理事 京都大学名誉教授)
林 康裕(京都大学名誉教授)
藤井 義久(京都大学名誉教授)
鶴岡 典慶(京都女子大学教授)
疋田 覚((一財)建築研究協会 事務長)
監事 中村 博文(税理士)
評議員 髙橋 大弐(京都大学名誉教授)
石田 潤一郎(京都工芸繊維大学名誉教授)
三浦 研(京都大学教授)
冨島 義幸(京都大学教授)
名誉顧問 金多 潔(京都大学名誉教授)

(令和 6年 6月 14日現在)

事務所登録

一級建築事務所(京都府知事登録(05A)第01840号)

事業内容

事業概要

上記の目的を達成するため、次の事業を行っています。

    1. 1.建築技術に関する調査研究、研究の助成、文献の発行
    1. 2.文化財建造物、近代化遺産・近代産業遺産等に関する調査研究、研究の助成、文献の発行
    1. 3.伝統的木造建造物の材料劣化(防腐・防蟻・長寿命性)に関する調査研究、研究の助成、文献の発行
    1. 4.木造伝統構法による建造物の耐震・劣化等の診断技術者の養成、研修及び資格認定
    1. 5.伝統建造物診断評価委員会等委員会、研究会の設置
    1. 6.文化財建造物・未指定文化財建造物・社寺建築等の復元・保存・修理・活用・防災施設事業に関する設計監理業務
    1. 7.公共施設、文教施設等に関する設計監理業務
    1. 8.その他この法人の目的を達成するために必要な事業

伝統建築部門

修理

修理する建物の実測調査、破損調査等を踏まえて修理方針を決定し、保存修理計画を立てます。修理工事途中には、瓦、木材、土壁、塗装、基礎等の調査、材種・形状・加工状況・痕跡等の部材調査を踏まえて、部材の時代判別、当初形式の考察を行い、必要に応じて修理計画の見直しや、復原の検討を行います。

修理について

構造

文化財建造物の耐震診断や補強設計では、建物の3次元モデルをPC上で構築し、解析を行うことで、地震時の挙動を詳細に把握し、安全性を判断します。耐震診断の結果、耐震補強が必要となった場合には文化財としての価値に最大限配慮しつつ、耐震性能を確保することを目指します。

構造について

防災

日本は古くから自然災害が多く、それに伴う火災により多くの文化財建造物が被害を受けています。また近年では自然災害に加え、人による棄損事故も増加しています。こういった災害から文化財建造物を守り、歴史的価値を損なわないような、防災設備の調査及び全体計画・設計を行います。

防災について

新築

事業主の設計条件をくみ取り、事前調査を行い周辺の歴史的建造物や環境などを参考に、文化財修理も行う当協会の経験や知識を生かした設計案を提示します。
工事監理では新築する建物にふさわしい技法や部材の選定を行い、現代の技術と伝統的な意匠を融合させた建築を実現します。

新築について

研究部門

研究に関する事業

  1. 教育・文化公共施設に関する調査研究
  2. 建造物の耐震強度に関する調査研究
  3. 鉄骨構造物に関する調査研究
  4. 鉄筋コンクリート構造物に関する調査研究
  5. 木材の防腐・防蟻に関する調査研究
  6. 集合住宅システム開発計画・生産施工に関する調査研究
  7. 建築環境工学に関する調査研究
  8. 文化財(指定・未指定)建造物並びに史跡等に関する調査研究

非常勤研究員の研究題目

  • 建築保全再生学
  • 建築史学
  • 建築情報システム学
  • 建築構造学
  • 建築構造計画学
  • 建築環境工学
  • 建築環境計画学
  • 建築生産工学
  • 建築耐震・制震工法
  • 建築計画学
  • 建築設計学
  • 建築遺構保存学
  • 建築都市環境工学
  • 建築防災工学
  • 循環材料創生
  • 施設計画学
  • 木材保存学
  • 木質材料機能
  • 構造評価法
  • 環境構成学
  • 生活空間学
  • 人間環境設計論
  • 保存修景計画学学
  • 公共施設計画学
  • 地震予測工学
  • 地震災害
  • 大空間構造解析学
  • 居住圏環境共生
  • 居住空間学
  • 巨大災害被害抑止システム
  • 生活空間工学
  • 生活空間計画学
  • 生物材料工学
  • 空間安全工学
  • 総合防災
  • 緑地環境保全学
  • 耐震・制震工学
  • 耐震鉄骨構造学
  • 造園計画学
  • 都市安全工学
  • 都市空間安全制御
  • 都市空間工学
  • 鉄骨安全工学
  • (順不同)

 

現在、当協会の主任研究員・非常勤研究員は、京都大学及び国公私立大学教授等48名です。

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